極意その2は、「日本語で思考力をきたえる」。
帰国子女でもなく留学経験もない純ジャパは、いきなり英語で考えようとするよりも日本語を活用したほうが現実的で実践的です。
母国語の軸というのは、第2言語を習得するときに大きな役割を果たします。つまり、英語を学ぶときにも、日本語能力が大きな役割を果たしているのです。
母国語である日本語と、今までたくわえてきた知識・経験などをフル活用して思考力をきたえましょう。
純ジャパに「英語脳」は有効か?

英語がスムーズに口から出てこないのは「日本語で考えてから英語に訳しているからだ」とする考え方があります。
だから日本語で考えるのをやめて、すべて英語で考えて英語でアウトプットする、というのが「英語脳を作る」という論理ですね。
英語で覚えたフレーズをそのまま口に出すとか決まりきった言い回しを使う場合には効果があるかもしれません。
でも、自分の頭にある考えをまとめてから伝える場合はかなり難しいのではないでしょうか。
また、「日本語で考えるのをやめろ」と言われても「どうやって?」という気持ちになります。
純ジャパにはその前の段階があってもいいはずです。
英語の語順と思考法は似ている

日本語と英語、何が一番違うと思いますか?
語順です。
英語では結論が先にきます。主語の次に述語。
日本語では最後にくる結論が、英語では一番最初にきます。
「結論」よりも「要点」のほうが、わかりやすいかもしれませんね。
つまり、言いたいことを最初に言うのが英語。
ネイティブの考え方・思考法は英語の語順と同じです。
まず最初に要点を言います。
この点を意識すれば、日本語で考えたとしても英語的な思考法に近づくのです。
英語を学ぶときにも、日本語能力が大きな役割を果たしている
日本語で考えても英語力アップに役立つのはなぜでしょうか?
「日本語を活用した英語授業のすすめ」(吉田研作・柳瀬和明著、大修館書店)に書かれていた説明は少々専門的で難しいので、私なりにかみ砕いてみます。
カナダの有名なバイリンガル教育学者であるカミングスは、人間の言語能力を大きく2つに分けました。
- BICS (Basic Interpersonal Communication Skills)=日常会話レベルの能
- CALP(Cognitive Academic Language Proficiency)=より知的な作業に必要な能力
カミングスは長年の研究の末、第二言語で1のBICSレベルになるには約2年、2のCALPレベルになるには6〜8年かかるという結論を出しました。
さらにカミングスは、CALPの大きな特徴を「二重氷山のたとえ」を用いて説明しています。
下の図を見てください。この氷山は、バイリンガルの人の言語能力を表しています。

図のまん中の波線は海面で、氷山は海面の上に見える部分と、海面の下にかくれた部分から成り立っています。
左側は母国語(日本語)で、右側は第二言語(英語)。海面の上に突き出ている部分は私たちが目にしたり耳にする言葉を指します。
注目してほしいのは、海面下にある「共通言語能力」(Common Underlying Proficiency)です。これは日本語を使うときでも英語を使うときでも関係なく存在する「ものの考え方」「知性・知識」「経験や体験」で、目には見えません。それまでの人生でたくわえてきた、その人の軸となる部分です。
この根っことなる「共通言語能力」を身につけておくことで、別の言語を学び、使用するときにも活かすことができる、とカミングスは言いました。
日本人が英語を外国語として学ぶ際には、日本語できちんと思考できる力が身についていればそれを使うことができると(カミングスは)いうのである。
注:( )はNaokoが追加
「日本語を活用した英語授業のすすめ」吉田研作・柳瀬和明著、大修館書店
英語を学ぶときにも、日本語能力が大きな役割を果たしているのです。
日本語で英語の思考回路を作る

頭から日本語を追い出す必要はありません。
考えてみてください。
日本語で言えないことを英語で言えると思いますか?
日本語で考える力がきちんと身についていれば英語に応用することができます。
頭で考えていることをアウトプットする言葉が違うだけ。
「出世する英語 アメリカ人の論理と思考習慣」の著者、小林真美さんもこう言っています。
コミュニケーションで求められるのはネイティブ並みの英語ではなく、「相手に伝わる話し方」と「話の中身」です。
(中略)
日本語できちんと思考する力を持っているなら、たとえ今、英語力に難があっても、気にする必要はありません。
(太字はNaoko)
母国語である日本語を使って思考力をつければいいと思うと、なんだかホッとしませんか?
無理して英語だけで考えようとせずに、日本語で伝えたいことのポイントを常に意識してください。
まずは日本語で英語的な思考回路を作るのです。
すでにある知識と能力を活用しよう

純ジャパのあなたには日本語の軸があります。
今まで蓄えてきた知識と言語能力が十分に備わっています。
その知識と能力を使わないのはもったいない。
日本有数の英語学習法のスペシャリスト、池田和弘氏の言葉を引用します。
日本語を活用すると無理なく、確実に、強力な英語の基盤を作ることができる。
この言葉、すごくうれしくないですか?私はとても励みになりました。
まずは日本語で「英語的な思考回路」を作りましょう。「英語で考える」のはそのあとでいいのです。
英語的な思考回路を作っておけば、英語でアウトプットするときに必ず役に立ちます。
- 日本語で思考力をきたえる
次回の極意は「英語を習慣にする」こと。お楽しみに!