今回ご紹介するのは “The Americans” (邦題「ジ・アメリカンズ」)。
アメリカ人になりすましたロシア人夫婦スパイを描くドラマです。フィクションですが、元CIA捜査官が書いたストーリーだからこそのリアリティに圧倒されっぱなしでした。シーズン6で完結です。
目次
あらすじ

典型的なアメリカ人家族だけど実は… (画像はFXより)
舞台は米ソ冷戦の1980年代。ワシントンDCの郊外に暮らすフィリップ・ジェニングス(マシュー・リス)とエリザベス(ケリー・ラッセル)は、娘ペイジと息子ヘンリーの4人家族。一見、絵に描いたような幸せな家族ですが、実はフィリップとエリザベスはアメリカに潜入したソ連のKGBスパイなのです。
フィリップとエリザベスは国家に命令されて結婚しました。20年前、身分を偽装してアメリカ人になりすまし、2人の子どもをもうけます。表向きには旅行代理店を経営し、ごく普通のアメリカ人として生活する一方で、誘拐・色仕かけ・殺人さえもいとわずに祖国のためにスパイ活動を行っています。
ジェニングス家の向かいに、FBI捜査官スタン・ビーマンの家族が引っ越してきます。しかもスタンは(よりによって)ソ連のスパイを取り締まる捜査官。まさか向かいの夫婦がKGBスパイだとは思わず、どんどん親しくなっていきます。
ネタバレになってしまうので詳しい内容は書きませんが、毎回ドキドキハラハラしながら見ました。やはり、いつバレるのか?という緊張感があるのがいいです。シーズン6で終わってしまいましたが、「もう少し続いてほしかった」と思わせる理想的な長さだったと思います。
ドラマのみどころ
フィリップとエリザベスの変装
何といっても、フィリップとエリザベスの変装でしょう。まさに七変化!カツラで髪の色と髪型を変えるのはもちろん、メガネ、ひげなどで、変身します。

from Pinterest
ときおり、フィリップがカツラをべりっとはがすシーンが出てきます。つけるのには時間がかかるでしょうに、はがす時は一瞬。カツラをとると、念入りに施された下地が見えるのです。たくさんのピンでとめて、さらにはネットがかぶせてあったりして、実に手が込んでいます。スパイって、手先が器用じゃないとなれないな、と思いました(当然か!)。

from Pinterest
最大の敵が最大の友になる、という皮肉
隣人として仲良くなっていくスタンとの関係も、かなり緊張感があります。スタンは、まさかエリザベスとフィリップが、自分が捕まえようとしているスパイとは気づきません。灯台下暗しとは、まさにこのこと。
スタンはソ連大使館で働く情報提供者ネーナと深い仲になり、夫婦仲が崩壊します。ネーナを演じた女優はアネット・マヘンドゥル(英語サイト)、ぽってり唇がセクシーでした。

アネット・マヘンドゥル (写真はhttps://www.imdb.com)
米ソの冷戦時代という背景が興味深い
80年代という時代も興味深いです。もちろん今のような携帯電話やデジカメはなく、パソコンはごっつくて古めかしい。会話を録音するのはカセットテープ、外からの電話は公衆電話を使います。なんだかとても懐かしい。
アメリカとソ連の冷戦、政治的かけひき、男女の愛憎関係、子育ての葛藤など、いろいろな要素がからみあった大人のエンターテイメントです。
母と娘の激しい言い争い(ネタバレあり!)
シーズン6の第8話で、娘ペイジが母親であるエリザベスを問い詰めます。

from FX
ここからネタバレがありますので、もしこれからご覧になる予定の方は、この会話は読まないでくださいね!ちなみにネタバレは spoiler といいます。ネタバレ注意は spoiler alert です。
娘ペイジは両親がソ連のスパイだということを知らされ、いろいろ悩んだ末に自分もスパイになることを決めます。でも、体を使ってまで相手をだますことを理解できません。母親エリザベスが若い男をたぶらかして利用したことを知って、怒りをぶつけます。

How many times? How many men? 何回? 何人の男とセックスしたの?
Were you doing this when I was a baby? 私が赤ちゃんのころもこういうことしてたわけ?
You’re a whore! ママは売春婦よ。
Does Dad know he married a whore? パパは売春婦と結婚したってこと知ってるの?

Stop it! やめなさい!

The truth is that moment you told me who you really are, I should have done what Henry did. Get as far away from you as possible.パパとママがスパイだと知ったらすぐに、私もヘンリー(弟)みたいにママからできるだけ離れればよかった!

That’s enough! いい加減にして!
It doesn’t mean anything to me. セックスなんて私には何でもないわ。
I wasn’t brought up like you were. 私はあなたみたいに育ってないの。
I had to fight. 私は戦わなきゃいけなかった。
Always. いつも。
For everything. あらゆることのために。
People were killed, they died, all around me. 私のまわりでは人が殺され、死んでいったわ。
If I had to give everything so that my country would survive, so that it would never happen again, I would do it gladly. 自分の祖国が生き残るためなら私は何だってしてきた。
We were proud to do whatever we could. 何だってできることが誇りだったわ。
Sex? What was sex? Nobody cared. セックスが何だっていうの?誰も気にしないわ。
Including your father. あなたの父親も含めてね。
めったに感情をあらわにしないエリザベスがおでこに青スジをたてて言い返すシーンに、初めて彼女の心の中を見た気がしました。
私生活でもカップルになった2人
マシュー・リスとケリー・ラッセルの演技は、真に迫っていて本当に素晴らしかったです。このドラマで夫婦役を演じた2人は私生活でもカップルとなり、息子が生まれました。演技がリアルなわけだ、と納得(笑)。
目的のためには手段を選ばないスパイだけど、やはり人間としてのもろさ・弱さをかいま見せるシーンも多く出てきます。常に神経を張りつめて生活しているから、ストーリーが進むにつれて2人とも疲れの色がどんどん濃くなるのです(目の下のクマがすごい)。言葉にはしないけれど、お互いを思いやる気持ちが伝わってくる場面が私はとても好きでした。
雑誌のインタビュー記事で
雑誌 Entertainment Weeklyで、シリーズが完結するにあたってのインタビュー記事がありました。

Entertainment Weekly 2018 summer preview
記事の最後の部分を抜粋します。
Interviewer: And finally, how would you, to avoid spoilers, describe the series finale in one word?
ネタバレにならないように気をつけて、最終話を一言で表してみてください。
Rhys: Satiated.(発音 [séɪʃièɪtid] サシエイテッド)満足。
Russel: It just feels right. I loved it. I hope you guys like it! ふさわしい(こうあるべき)終わり方だと思うわ。私は好き。みんなも気に入ってくれるといいけど。
(Naoko抄訳)
私が最終話を一言で表すなら devastated あるいは heart-wrenching かな。見終わったあと、長いこと余韻に浸ってしまいました。最後の最後まで、いろいろなことを考えさせてくれるドラマです。
最後に
いかがでしたか? ハラハラドキドキが好きな方にはオススメのドラマです。
でも小さなお子さんとは見ないほうがいいですよ。かなり残酷でキワどいシーンが多いですから。
- spoiler ネタバレ
- spoiler alert ネタバレ注意!
- satiated = satisfied 満足のいく、満たされた
オフィシャルサイトはこちらです↓。
FX: The Americans official site
日本ではNetflixでシーズン5まで放映中です。
Have a wonderful day!