あなたにとって必要な英語は何ですか?
お子さんがいて渡米を控えているとしたら、子育ての英語が一番必要ですよね。学校の先生やママ友とのやりとり、習い事の申し込み、病院の予約など、いろいろな場面で英語が必要になります。
もちろん、ネイティブみたいにペラペラに話せたら理想的。でも「ペラペラ」を目標にするのはやめましょう。ハードルをさげて、ゆっくりだけど着実に一歩一歩進むほうが、英語力だけでなく人間力もつきますよ。
英語で言わなくては!と頭では分かっていても、フリーズしてしまって英語が出てこないのはよくあること。必要なのは準備運動です!
スポーツをする時も準備運動は必須ですよね。文化も言葉も違う国で新しい生活を始めるにあたって、しっかり準備をしておくことは大切な心のストレッチ。発音練習をして、英語の口・舌・あごの動きを練習しておくのも役立ちます。
今回は、私の苦い経験を交えながら、ペラペラを目指すよりも「自分に必要な英語」を見極めた上でコツコツ努力することがなぜ大切なのかを説明したいと思います。
目次
バイリンガルへの憧れはモチベーションを高めるけど
私が大学に入った年(1988年)、J-Waveという新しいFM局が開局。平日朝の番組「TOKYO TODAY」を聞くのが楽しみで仕方ありませんでした。
何といってもナビゲーターのジョン・カビラ氏がイイのです。声もステキだし、いつも元気だし、英語も日本語も流暢にあやつる完ぺきなバイリンガルぶり。

(c) Jon Kabira Official Website.
特に、世界の面白いニュースを見つけてきて、その当事者に電話をする「突撃電話」は本当にワクワクしました。英語が話せると世界中の人とコミュニケーションができるんだ、と思い、さらに英語の勉強に精を出したものです。
こういう憧れの存在は大切だと思います。こういう人になりたい、という具体的な目標があるとモチベーションを維持できますからね。
でも、ふと思いました。
日本人って、こういう完ぺきなバイリンガルを目指してしまっている?
英語はペラペラになってから話さないと恥ずかしいと思ってない?
やっかいな思いこみとプライド

かくいう私もその一人でした。
渡米してしばらくは、ことあるごとに”Sorry for my poor English.”(英語が下手でごめんなさい)と必要以上にへりくだっていました。でも相手はたいてい”Your English is good!”と言ってくれていたのです。その言葉に耳を貸す気にはなれませんでした。
なぜなら「ネイティブみたいにペラペラじゃないと英語ができるとは言えない」と思いこんでいたから。
自分の中に妙なプライドがあることにも気づきました。映画と英語が好きで字幕翻訳までやっていた私なのだからもっとできるはず。なのに、どうして英語が出てこないの?
実際に英語で生活してみてぶつかった大きな壁でした。
中学生から始めた英語。社会人になってからは英会話学校にも通いました。
字幕翻訳を仕事にしていたからって、実際に英語を話せるかどうかはまったく別の話。40才直前で渡米するまでは、実際に英語を話すチャンスはほとんどゼロでした。
思い返せば、渡米後にどんな生活が待っているか、具体的にイメージすべきだったと思います。行けば何とかなるだろう、とたかをくくっていました。
英語が出てこない! 私の苦い経験
しかし現実はそう甘くありません。私の苦い経験を紹介しましょう。
学校の受付で頭が真っ白に
歯医者の予約のため、長女を学校から早退させるために迎えに行った時のこと。
学校の受付で「早退させるから迎えにきました」という英語が出てこなくて頭が真っ白になり、受付の前で無言で立ちすくんだことがありました。今ならこう言います。

公園で

公園でくやしい思いをしたこともあります。
当時1歳だった次女が、滑り台の下の砂場で遊んでいたときのこと。滑り台を上がった場所の床にはポツポツと穴があいていました。滑り台の上にいた3歳ぐらいの子どもが、下で遊んでいる次女にツバをかけたのです。私はカッと頭に血が上りました。
その子どもの祖母と思われる人がそばにいましたが、とにかく頭にきて英語が出てきません。何も言わず、次女をかっさらうようにして公園をあとにしました。

緊張していると頭がフリーズする。
頭に血が上っていると英語が出てこない。
そんな自分が情けなかったです。
忘れられない水玉模様
渡米して1年ほど経った、長女が1年生のときのことです。当時、水玉のワンピースを気に入ってよく着ていました。
学校にちょっと早く着いた朝。クラスのお友達と走り回りながら遊んでいた長女が、急に私のそばに駆けてきて、ひどく不安そうな顔で聞きました。


その言葉に、長女はホッとしたような顔をして、また友達のところに戻りました。
思うに、I like your polka dot dress.とか Polka dot dress looks good on you.とか言われたのでしょう。でも、polka dotの意味が分からなくて不安になった。
当時、友達と遊ぶときは、とにかく言いたいことを単語で表現していた長女。お友達と一緒に遊びたい!という強い気持ちがあってこその体当たりコミュニケーションでした。間違えたら恥ずかしい、なんて言っていられない状況だったわけです。
子どもだったらすぐに英語ができるようになる、とよく言います。確かに大人に比べたら真綿のごとく吸収するでしょう。
でも、何の苦労もなく、という意味ではありません。子どもは子どもなりに苦労しています。
そんな長女の姿も、私の目を覚ましてくれました。
ペラペラ幻想は捨てた。必要な英語にフォーカス。
はずかしい。くやしい。情けない。
こういう気持ちはクルクルっと丸めて、「次こそは伝えてみせる!」という心のバネにしてしまいましょう。
「ペラペラ幻想」を捨ててからの私は、毎日のやりとりを1つ1つこなすことを小さな目標にしました。
学校の先生に娘の様子をたずねたり、同じクラスのママと立ち話をしたり。苦手な電話も、少しずつ慣れるように練習しました。電話は今でも苦手なので、かける前に必ず要件をメモに書いています。
また、ちょっとしたトラブルにも対処できるようになりたい、と思いました。トラブルは「こういう時に限って」という時によく起こります。
次女が骨折したときの、私のリアルな体験談はこちら。
車で出かけようと思ったら、ガレージのドアが開かなかった。運転していたらタイヤがパンクした。車にキーを入れたまま鍵を閉めてしまった、などなど。こういう困ったときに何とか対処できる英語力が私には必要でした。
ネイティブみたいに話せなくてもいい。とにかく伝えたいことをきちんと伝えて、娘二人の学校生活を楽しいものにしてあげたい。トラブルが起きた時にも対応できるようにしたい。それが私にとって必要な英語でした。
アクセントは私の個性。
文法だって間違っているかもしれない。
でも、身振りを使ったり、スマホで写真を見せたり、絵を描いて見せたりして、精一杯伝えようとすれば伝わるものです。
そのとき自分が持っているものを総動員して、伝えたいことを伝える。その積み重ねしかありません。
誰が決めたわけでもない「こうあるべき」という枠は、早めに取っ払いましょう。自分を枠にはめているのは、実は自分自身なのかもしれません。
Have a wonderful day!